「女性目線で描く、伝えたいこと」

 

映画監督 中村 真夕

プロフィール:16歳の時に単身で留学し、高校、大学をイギリスのロンドンで過ごす。

1996年に渡米、コロンビア大学大学院を卒業。2001年に文化庁芸術家在外研修員に映画監督として選出。

2004年、ニューヨーク大学大学院映画科を卒業。高良健吾映画デビュー作「ハリヨの夏」で劇場用映画を初監督。

2006年釜山国際映画祭コンペティション部門に正式招待される。

2011年「孤独なツバメたち〜デカセギの子どもに生まれて〜」を監督、2012年ブラジルの映画祭ドキュメンタリー部門でグランプリを受賞。

2015年、福島の原発20キロ圏内に一人で動物たちと暮らす男性を追ったドキュメンタリー映画「ナオトひとりっきり」が全国の劇場で公開。モントリオール映画祭のドキュメンタリー映画部門に招待される。

 

映画監督、中村真夕さん。

一見クールで敷居が高く見えるが、話せば話すほど気さくでいつの間にか引き込まれていく魅力的な世界感を持っている。

真夕さんの作品は、繊細で純粋な「自分の居場所探し」をテーマとした作品が多い。

行き場の無い想いや孤独、思い通りにいかない現実。後悔や迷い。

誰でも感じるであろう人生の瞬間を乗り越えていく生命力の強さを描く作品に共感せずにはいられない。

今回はインタビューを通して見えてきた、普段は見られない真夕さんの「作品の背景」にスポットを当ててみた。

テレビじゃ言えない話だから、じゃあ映画にしようと思って

 

福島原発から12キロの町、福島県富岡町。全町避難になった町で、ダチョウ、牛、猫、犬など被災地に取り残された動物たちと暮らすひとりの男性を追ったドキュメンタリー映画「ナオトひとりっきり」。

 

 

真夕さんはドキュメンタリー映画の撮影のために、2013年から2014年春まで月に1〜2回レンタカーに機材を積み込み一人で富岡町に通い続けた。

 

「ナオトさんのことは、某被災地番組の取材で福島をリサーチしてるときに知って、企画として提案したら、これはちょっと内容が内容っていうか。表向きには『長期的に取材に行ってあなたが被爆して健康被害が出ても責任取れない』みたいなことを言われたんだけど、多分全町避難のあった街に人が残っていて動物がいるってことをあんまり見せるのがよろしくないのかなと。

 

 

テレビじゃ言えない話なら、じゃあ映画にしようと思って。まぁ場所が場所でお金も無いしとりあえず自分のカメラを持って、レンタカーを借り、機材積んで一人で通い始めて」

実は撮影を決断した時点で日本の運転免許を持っていなかった。ニューヨークで取得したまま10年間ペーパードライバー。

「富岡町に通うには交通手段はやっぱり車しかないので、教習所に行って免許を取りなおしてから若葉マークを付けて通いました(笑 )。現地では、ビジネスホテルみたいなほとんど作業員とか除染のおじちゃんが泊まってるところに滞在して」

被災地の現状をどうしても伝えたいという真夕さんの熱意が伝わってくる一面だ。

 

 

おやすみスプーン

 真夕さんは幼い頃に住んでいた東京を離れ、京都の祖父母の家に預けられる。両親とは別々に暮らしていた。監督デビュー作「ハリヨの夏」では、何度か真夕さんの父親、詩人の「正津勉」さんの詩が登場する。

 

 

映像にぴったりで父親の詩は「ハリヨの夏」になくてはならない存在感を演出している。

 

ーお父さんの好きな詩は何ですか?

 

中村:父の好きな詩は「おやすみスプーン」彼にしては結構優しい詩なので好きで。昔付き合っていた女性に対しての詩らしいんですけど。結構そういうのは複雑で、子供の頃はあんまり読めなかったですね、恥ずかしくて。

 

 

父の詩は、性愛の詩っていうか結構過激な詩が多くて、思春期に読むのはちょっと恥ずかしいみたいな。親のそういうの知りたくないし…… 。16歳で留学してイギリスに行ってるときに読み始めて「んー、なるほどねー」って思って、大人になってやっと理解できたみたいな感じです。

 

ー映画「ハリヨの夏」に出てくる詩はお父さんの詩ですよね?

 

中村:そうですそうです、あれが「おやすみスプーン」

 

 

ーなるほどー!

 

中村 : どこの女の話かよく分からないけど(笑 )。 まぁ今やその父親ももう70なんで、もう女は疲れたし卒業ー! とかいって山登りばっかりしてます。もうおじぃちゃんになっちゃったから疲れちゃったみたい(笑)。

 

 

人と同じじゃつまんない

 

京都で暮らすようになった真夕さんは、話し方の違いからいじめを受けていた過去がある。留学していたときには文化の違いで差別を受けていた。今現在どこかで同じ様に辛い思いを体験している人に向けて、辛い経験を乗り越えた今だからこそいえることはないか聞いてみた。

「日本のいじめって特にそうなんですけど、人と違う人がいじめられる。ちょっと変わった子とか何かそういう事でいじめられるんだけど、私は逆だと思ってるんです。人と同じ事って全然つまんないと思ってるから、人が違うほうを面白いじゃない! っていう考え方。例えば友達に、性同一性障害の子や、障害を持ってて全盲の人、足が不自由な女性もいる。それも私にとっては全て個性だと思っていて。その人しか経験し得ない世界を持ってるっていうのは強いと思うんです。

ほかの人と違うことは実はすばらしいことなんだと。いろんな価値観とかいろんな人がいて当たり前だよって。まぁ社会はそうじゃないかもしれないけど、自分の中で『あ、わたしはほかの人と違うかもしれないけど、だからこそできることがあるんだ』ってふうに見られたら全然違うんじゃないかなって思いますけどね」

まっすぐな目やはっきりとした話し方に、女性の芯の強さを感じた瞬間だった。

監督デビュー作「ハリヨの夏」は女性目線から見た女子高校生の話。

次回、真夕さんは「ハリヨの夏」の続編を感じさせる、女性目線から見た中年女性の映画を企画している。中年女性の肩書きは、この国ではまだまだ生きにくさを感じることが多い。真夕さんはそんな「女性の生きにくさ」に注目した作品づくりを考えている。

また、アメリカの永住権を持つ真夕さん。将来はアメリカに舞台を移した映画作りを目指す。

「中村真夕監督」の描く新たな作品が待ち遠しい。

(2015.11.29 都内某所)

 取材・ライター: 松元加奈

 

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先日まで全国で放映されていた映画、「ナオトひとりっきり」のDVDが12月25日Xmasに発売、レンタルを開始!

 

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