「可視化できるアドレナリン」

書家

​黒蛇

筆者がいまだかつて「人」から感じたことのなかった独特でミステリアスなオーラを放つ書家「黒蛇」。

 

 

普段の温厚そうな彼からは想像できない書道パフォーマンスは、黒い蛇が体に憑依し、獲物を仕留めるかのようなゾクゾクとした中毒性のある忘れられない感覚を味わえる。まさに「可視化できるアドレナリン」。

 

黒蛇は今までいじめ、鬱病、借金、ホームレスとういう経験を重ね、波乱万丈な人生を歩んできた。剣道では団体戦で全国大会の優勝経験もある驚異的な経歴を持っている。2018年は世界中のアーティストの憧れでもあるラスベガスでの書道パフォーマンスを経験。

 

今回は書家黒蛇の今まで辿ってきた「人生」にスポットを当ててみた。

どうやっていいか全然わからなかったから、もう何でもいいからやってみよう。

ーーー書家になったきっかけは何ですか?

 

 

きっかけは、もともと学生時代にいじめにあっていて、放課後みんながグラウンドで野球したりサッカーしたり遊んでる中で仲間に入れなくて、家に帰ってすることないじゃないですか(笑)?

 

することないから筆ペンとかボールペンで遊んでいて、それがめちゃめちゃ楽しかったんですよね。でも誰に見せるわけでもない。ただ書いて、当時は逃げるために書いていたんですよね、いろんなしがらみから。

 

 

 

ーーーすぐに書家になれたのですか?

 

そもそもその当時、鬱病で、まともに働けなくて、バイトも、遅刻に、早退、無断欠勤で、全然身にならないというか……。

 

働けないからお金が入ってこない。じゃあどうしよう? っていうので、部屋中の小銭をかき集めてこれで何かできないかなって。かき集めたら400円くらいになって、ほぼほぼ1円玉とか10円玉ですよ(笑)。これで何をしよう? って。

 

もう追い込まれているわけですよ、借金もあったし、いろんな現実が引っ付いていた中で何か変えないとダメだなっていうのはあったんですけど、何を変えていいか、どうやっていいか全然わからなかったから、もう何でもいいからやってみよう! って。」

書家の始まりは400円。全財産400円で筆ペンと筆ペンに入れるカートリッジ2本、半紙を購入し、Facebookでのライブ配信を始めた。

「もう手持ちの全財産の400円も使っちゃたから食費も無いんですよ。これを使ってお金を手元に入れないと俺は食っていけんぞ! っていう状況を作ってしまって、追い込まれて出たのがライブ配信。見るだけじゃお金は稼げないので、好きな文字をリクエストもらって、もしその作品を書いた紙が欲しいなと思った人は僕にダイレクトメッセージをくださいって。その値段はいくらでもいい、もう本当投げ銭、100円でも200円でもと思っていたんですよ。 」

ホームレス、鬱病、体重42キロ……。

お金も住む家も無くなった黒蛇は、一週間ほどホームレス生活に。

 

 

「ホームレスをしていて、さすがに屋根欲しいなと思って、空き家を探し回ったんです。リュック1つと携帯の充電器、携帯、ポイントカードしか入ってない財布(笑)、あとTシャツとジャージのズボン1枚、それだけ持って。

 

 

歩き回っていたらやっと空き家を見つけたんですよ。めっちゃいいじゃん! って思ってその家の庭でずーっと眺めていたら、おばちゃんが話しかけてきて「何してんの?」って。空き家を探していることを伝えたら、うちも空き家持ってるよって。行ってみたらまぁめっちゃボロいんですよ、もう本当に(笑)。でも「屋根さえあったらいい」と思っていたので、ここに住ましてください! って。

 

「月いくらなら払える?」って言われて200円って言ったんですよ、頭を下げて。バカかって叩かれたけど、じゃあ1万ならいいよって(笑)。

 

 

ただ月に1万円稼ぐしんどさというか、全く想像できてなくて。どうなる分からないけどやってみよう! ってやってみたのですが案の定うまくいかず ……。家賃も払えないわ、ライフライン全部止まるわ食料ないわで、「さぁどうしよう、食べ物ない、腹へった」みたいな。その時の体重42キロとかですもんね(笑)。

 

 

ーーー42キロ、凄まじい(笑)。その状況からどうやって抜け出したんですか?

 

 

「知り合いの人がやってるBARがあって、 オーナーさんが「一回うちに飲みに来い」って連絡くれたんです。3000円なんて大金アホかって思ってるときだったから、「俺お金持ってないから行けないですよ」って言ったら「金はいいからとりあえず来い」って。BARに行ってDさんという人に出会いました。Dさんはビニールハウスでキュウリの農家さんをしていて 、スノボの大会がアメリカであるからその間仕事を手伝ってくれないかって言われました。

 

 

 

そのときほんとにネガティブだったんですよ、思考も急にザーーーって下がるし頭も回んないし、体も重いし。それをDさんに全部話したんですよね、そしたら無理ないようにするからって。疲れたと思えばもう来なくてもいいし、やらなくていいよ! ちゃんとアルバイト代も出す! って言ってくれたんです。家賃1万円の家を出て行ったあとだったので「Dさん俺住むとこ無いんですよ」っていったらDさんのビニールハウスの横にある倉庫みたいな大きい建物があるんですけど、そこを掃除してくれて、ここなら住んでいいよって。 嬉しかったですね、屋根もあるし。Dさんは僕の命の恩人です。 倉庫もめちゃめちゃクールでした 。」

ネガティブなアウトプットがシフトチェンジされて感動を生む

ーーーどうやってマイナス思考からここまで変われたんですか?

 

 

 

きっかけは、路上に出たことですね。

 

普段デジタルのものでやっているので僕しか写ってないんですよ、相手の顔が見れないというのが引っかかってて。どんな顔してるんだろう? って感じたのが路上を始めたきっかけでしたね。

 

 

ーーー路上って、めっちゃ勇気が必要だと思うのですが?

 

本当は家から出たくなかったんですよ、あのとき。もう引きこもりで、いろんなものが怖くて。防犯カメラも怖かったし、車も、人の話し声、笑い声とかいろんなものが怖くて。街に出るなんて想像もできないくらいだったんですよね、そんな中であるとき”路上いけるかもな!”ってふわって思ったんですよ、めっちゃちっちゃいですよ、ちょこっとだけ”いけるかも”って。

 

 

 

ーーーー書道パフォーマンスでは本当に”黒ヘビ”が乗り移ったかのような迫力を感じますが、どうやってあの書道パフォーマンスを思いついたのですか?

 

 

 

路上でパフォーマンスをやっていたのをきっかけに小学校のイベントに出させてもらって、初めて大きい作品を書いたんですよ。

 

体育館の中でパフォーマンスをやらせてもらったんですけど、めちゃめちゃビニールシートが大きくて。

 

そんなの準備されてる中で、模造紙一枚でパフォーマンスするのはちょっとなーっていう(笑)。

 

 

やってる側もしんどいけど、見ている側もしんどいだろうなって……。大きい作品を書こうと思って、模造紙をつなぎ合わせて、3mオーバーのおっきいやつを用意しました。

 

 

そのときすごいネガティブだったから、”今の俺を全部表現すればいいや! もう何を書いてもどう暴れようが関係ねぇわ!”と思ってそのときパッと出たアイディアで書いたんですよね。

 

 

みんなをドン引きさせてやろうと思って、筆を握ったんですよ。だからもう、できた作品も書いてる仕草も言えば”ネガティブの塊”ですよ(笑)。

 

 

パフォーマンスが終わって印鑑を付けて、顔を上げたら小学生や父兄たちがみんな”わーーー”って拍手してくれていて、終わってからの物販ブースでも行列ができて。そのときめちゃめちゃ違和感がありました。

 

 

なんでだろうと思って、何日か考えて、多分これだろうなと思ったのが、ネガティブなものを全部出したのに、それが返って誰かの感動だったり、なんかすげー! って、作品を通してシフトチェンジしてたというか、ネガティブなアウトプットがシフトチェンジされて感動を生むというか。

 

 

それを理解できてからは、作品を書いている時だけは包み隠さず全部俺を出そうと思って、日頃思っていることだったり、嫌なことだったり、馬鹿が、クソーーーっ! って思っていることとか、本当にネガティブなことをずっと考えながらひたすら筆握ってましたね(笑)。 自分のネガティブな感情をパフォーマンスを通してアウトプットしてるという感じですね。

”どうやって死のう”っていうのを考えていたのに、”どうやって生き延びようか”って考えてました。

日本全国を周り、1日平均2万円、多い日は8万円ものお金を路上で稼げるまでになっていた黒蛇は、ラスベガスに行く前の心境を「めちゃめちゃ調子に乗っていた」と振り返る。

 

ラスベガスでは2日目に拳銃を所持した強盗に遭い、持っていたお金のほとんどを失った。パフォーマンスですぐにお金を取り戻せるだろうと、余裕を感じるも、待っていたのは過酷だけど意外な現実だった。

 

 

 

「所持金もない、ラスベガス滞在の後半2週間は宿もない、お金を取り返さないと動けないという追い込まれた状況の中で路上をやって、日本と同じスタイルでやっても誰も見てくれない。時々話しかけてはくるんですけど、英語が分からないのでもう致命的ですよね。パフォーマンスをメインでやってみたり、場所を変えてみたり、いろんな方法でトライアンドエラーをしてみたのですが、全てダメで僕のアイディアが出尽くしたんですよね。

 

出尽くした時に、財布を見たら数ドルしかなくて、もう数百円ですよ。またこの状況かっていう(笑)。

 

 

ラスベガスに行く1,2年前くらいは、”どうやって死のう”っていうのを考えていたのに、この時は”どうやって生き延びようか”って考えてました(笑)。逆転してる、真逆になってるなこれ、みたいな。

もちろんめちゃめちゃ余裕はなかったんですけど、なんか楽しかったんですよね。

 

 

 

​やる奴はやるよ

 

 

 

ーーー最後に、過去の自信の無かった頃の自分に一言言うなら何て言いますか?

 

 

「やる奴はやるよ! って言います。本当ちっちゃいことでも、やってるやつはやってるっていう。

 

 

得意不得意ってあるわけですよ、いろんな人がいて、人によって全然違ううわけだから。世界規模で見れば見るほど、余計いろんな人がいるわけですよ。その中で他人の目を気にして、何かのせいにして誰かのせいにして逃げるのはちょっと違うんじゃない? みたいな。

 

 

僕もめちゃめちゃありました! 病気のせいにしたり宮崎に住んでるから、田舎だからっていう理由もそうですし、まだ若いから、もう年だから、男だから、女だからとか、理由を付けしてしまおうと思えばいろんな理由があるんですよね。まぁでも結局、やるやつはやるよ! って。そんな感じですね。」

 

 


しがらみに揉まれ波乱万丈な人生を諦めず一歩ずつ確実に歩んできたからこそ、黒蛇の口から出てくる言葉に深さを感じた。「無駄な経験は何も無い」という言葉が実にしっくりくる生き方だ。自分ができることを精一杯考え、行動し、試行錯誤を続けた者にだけ、誰にも真似できない独特の感性やオーラは宿るものだと強く感じることのできた今回の取材。黒蛇が世界中で暴れまくる姿にこれからも注目せずにはいられない。

 

 

(2018.06.22 宮崎県SEEKBAKO)

 取材・ライター: 松元加奈

 

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