
『硬派な表現者』
シンガーソングライター
岡村 匡紘
http://www.okamuramasahiro.com
人々が抱える“ココロノスキマ”を描くことをテーマに活動しているシンガーソングライター、岡村匡紘。
彼は2007年に世界一周の旅に出て、その道中で出会ったさまざまな人に触発され、心を開かれ、その旅のなかで作詞や作曲をするようになったのだという。
岡村匡紘という人間は、親しくなるにつれ、驚くほど深みのあるその情緒や、迫力ともいえる強い情熱を、しばしば感じさせてくれるのだが、どういうわけか、付き合いの浅い人には、低体温そう、クールそうに見えるというのだから不思議だ。
“解り合えない”、これは今回の取材中、何度か出てきたキーワードとなる言葉。
話の端々に独特のこだわりがふんだんに見られ、インタビューをしていくにつれて“岡村匡紘は完璧主義に近いな”と感じた。緩いムードの肩の力が抜けたアーティストが主流になっているように感じられる近年にはめずらしいほどストイックな印象を受けたのだ。
そんな彼の人間像に、細かくスポットをあてて紹介していきたいと思う。
彼が出した1枚目のCDに収録されている「交差点の月」という曲は、スローテンポの中に柔らかな寂しさを感じさせるバラードだが、その曲に込められた想いについて聞くことができた。
人間っていうのは、解り合えないよね
——1枚目のシングル「交差点の月」について聞かせてください。
岡村匡紘:孤独感や生き辛さを表現したかった。
「交差点の月」は他の曲と比べても、その色が凄く濃い!
“群衆の中の孤独”をテーマに書いてるんだけど、僕は、人っていうのはひとりでいるときに孤独を感じるんじゃなくて、いろんな人といるときにふと、“あ、自分って人と馴染めてないんだ”とか、“なぜだかうまく出来ないな”とかって感じて、そんなときにこそ、より強く孤独を体感するんじゃないかなって思ってて。
それを“スクランブル交差点”っていう題材を使って書いた作品。
——自分の作る曲全体についてはどんなことがいえますか?
岡村:ちょっと、社会の窓際な感じの曲が多いかな。
幸福というレールから外れたポジションを書いてる気がする。
“人間っていうのは解り合えないよね。でも、人間は解り合えないけれども、お互いを汲み取ろうとする事は出来るよ”っていうメッセージ。
解り合えないからこそ、それを文章だったり、曲とかにすることによって、解り合えないと感じてる人がそれに触れて共感して、もしも少しでも救われたとしたら、そこに意味があるんじゃないかって、思ってるよ。
——どうして人と人は解り合えないと思う?
岡村:生きてきた環境なんだと思う。
解り合えないって思う環境に生きてきたのか、解り合えるって思える環境に生きてきたのか。どっちもいるんだよ。
だから、解り合えないって思って生きてきた根本的な核がある人間は、どれだけ解り合えそうな人と出会えても、やっぱり解り合えない。
最終的にそっち(解り合えないという結論)に突き進んでいくんだよ(笑)。
解り合えると思っている人はきっといつか解り合えるのかもしれない。
でも、それはもう人生の核次第だよ。どうしようもない。そう今は思ってる。


——その一方で曲には“解って欲しい”という気持ちが込められてるものが多いと思うのですが……。
岡村:根本的には解ってもらいたい気持ちとか、そういういわゆる飢餓感が強くある。気持ちが飢えてるんだよ。
その飢餓感の根源的な部分だけを前面に押し出してたときもあったんだけど、今はそれを押し出しても、もう理解はし合えないんだなって、自分の中で腑に落ちてる。経験として、無駄だなってことが染み付いてる。
だから、曲の中では“解って欲しい”って歌いながらも、対人のコミニュケーションではそういうのは求めない。ただ、本質は曲にあると思う。
後悔でもあり、いろんなことに対する懺悔でもある
「交差点の月」とは真逆なイメージで、どこか強さを感じさせる「Discommunication」。
インタビュアー自身もたぐいまれな名曲だと思うこの曲について聞いてみた。
岡村:「Discommunication」は、最初に“も〜”っていう歌い出しの部分がパッと出来て、次に“リダイアルしても……”って後を次いでいくニュアンスが派生して、そこをさらに拡げていってっていう作業をして曲を作っていったんだ。
けど、なんかね、基本的に自分の曲には、ちょっと諦めが入ってる曲が多いな。
“もう手遅れなんだろうな”っていう諦観と、後悔。それから……いろんなことに対する懺悔。
「Discommunication」は大人になりきれなかった頃の自分がいて、その頃の自分に対する懺悔として書いた曲でもあるような気がする。
“あの頃はいろんな人に構うことが出来なかった、気を向けることが出来なかった”っていう、それは自分のいろんな内面の問題からきてることなんだけど、そんなことを今、とても申し訳なく思ってる……というか、ただただ、その頃は本当に上手く生きられなかったんだっていうメッセージが込められてるかな。
——何か、大きな感情だったり、物事を乗り越えたからこそ、この曲には強さが感じられるのかもしれないですね。
岡村:この曲で描かれてる当時の自分にはこの曲は絶対書けなかったし、当時を振り返ってみると、あの頃はいろんなことがどうしようもなくて、自分をコントロール出来なくて、八方塞がり。そんな状況で。
いろんな人に迷惑をかけたんだよなって、再確認する心境なんじゃないかな。ある意味、自分の枠が拡げられた曲だなと思う。
大切なのは時間よりも集中力
——岡村さんが物事を達成させる為に不可欠だと思っていることはありますか?
岡村:何かを上達させるのは時間ではないと思う。
たとえば、これから何かを始めようとする人がいるとするじゃん。で、その人は、まあ絵でも漫画でも何でもいいんだけど、何かを始めたい。その人は年齢が25歳ぐらいだったとしよう。その人の目指してる業界では、その職業は一般的に10代から目指し始めるのが普通だと言われてるとするじゃん。
そうなったときに、その人はまず“俺、今からこんなことやったってちゃんと出来んのかな”って疑いを持つじゃん?
そこに対して言えることは、時間は確かにもの凄く大切なことのひとつではあるけど、もっと大事なのは“集中力”なんだよ、ってこと。
音楽にしても、別に10代から始めたからといって成功するわけじゃないんだよ。
20代から始めたからといって成功しないわけでもないんだよ。
そこにある大きな差となりうる要因は、実はいっぱいあるのね。運とか、才能とか、それはもう限りなくあるけど、個人がコントロール出来るもので言うとすれば、それが集中力。
結局何かを目指してる期間そのものの長さじゃなくて、意識が向いて、集中して、はっきり“やろう”っていうふうにスイッチが入ってる時間こそが自分の人生を進めさせる。
ただ漠然と物事を目指してるっていうだけでは、人生は進まないんだよ。
時間的なコンプレックスはきっと誰にだってあると思う。でも、そこじゃなくても、集中力があれば、それは本当に1年や2年でいろんなことがガラッと変わると確信している。だから物事がうまくいってない時は、時間の不足や方法よりも”自分は今本当に集中して取り組めてているか?”ということを問うようにしています。
僕もまだ道半ばですが、それが目標に達成する秘訣じゃないでしょうか。
(2015.7.8 都内某所にて)
取材:松元加奈・鈴木隆太
ライター:松元加奈
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岡村匡紘 おかむら まさひろ
ー主な経歴ー
栄ミナミ音楽祭出演
2013年、1st CD「交差点の月」リリース
Sky Perfect TV 出演
JCOM-TV「Love Spiral Gigs」 ゴールデンタイム出演
むさしのFM放送局 ゲストパーソナリティー出演
レインボーFM ゲストパーソナリティ出演
AKIBA 伝えたい!放送局 ゲスト出演 など。
ココロノナゾ
Discommunication
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